コラム
2024-11-13
BCPにクラウドを活用するメリットは?事例や注意点を解説
日本では自然災害や感染症の流行、テロ攻撃、情報漏えい事故など、企業が事業を中断せざるを得ないリスクが多数存在します。事業が中断し、復旧に時間がかかると、経済的損失だけでなく、社会的信用も損なわれる恐れがあります。
このような背景から、企業にはBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定、日常的な運用、定期的な見直しが求められています。BCPとは、自然災害や火災、テロ攻撃などの際に事業資産の損害を最小限に抑え、事業を継続または迅速に復旧するための計画です。
BCPにはさまざまな事項を含める必要がありますが、特に企業の機密データや重要なファイルなどの情報資産のバックアップ方針を定めることが重要な取組の一つです。
例えば、単一地点でオンプレミスのファイルサーバを運用している場合、自然災害などが発生するとデータが完全に消失するおそれがあります。そこで、BCPの観点からデータを適切に管理するために有効な手段となるのがクラウド環境の活用です。
本記事では、ファイルサーバに焦点を当て、BCPにクラウド活用が有効な理由や注意点、事例について解説します。
目次
BCPに定めるべき情報資産の管理とは
BCPには、従業員の安否確認体制や緊急時の資金確保など、さまざまな事項を策定する必要があります。そのなかでも、情報資産の管理は特に重要です。
例えば、ファイルサーバに保存されている従業員の個人情報や顧客情報、財務情報、開発中のサービス資料、経営資料などのデータが破損または消失すると、事業の継続が困難になります。
どの範囲のデータをどのようにバックアップし、どこで管理するかをBCPの観点で明確にし、適切にファイルサーバを運用することが重要です。
オンプレミスの課題
オンプレミスのファイルサーバにのみデータを保管していると、事業中断のリスクが高まり、中断時の復旧には多大なコストと時間がかかります。
機能停止やデータ消失のリスク
自社で管理するデータセンターにファイルサーバを設置している場合、その拠点が自然災害で被害を受けると、ハードウェアの破損による機能停止やデータ消失のリスクが増大します。
多額のコスト
迅速な復旧のためには、高頻度かつ広範囲のバックアップが必要です。しかし、そのためには大容量のストレージが必要となり、コストがかさみます。また、ハードウェアの損傷に備えて遠隔地にバックアップを保存するには、拠点確保や設備投資の費用も発生します。このような対策を講じていても、災害時にハードウェアが故障して交換が必要になると、復旧時の設備投資には多額のコストがかかります。
障害対応可能な専門知識を持つ人材の確保
オンプレミスでは、基本的に自社で障害に対応する必要があります。そのため、専門知識を持つ担当者が災害などで対応できない場合に備え、代わりに対応できる人材も確保しておくことが重要です。
情報資産のBCPにクラウドを活用するメリット
上述のオンプレミスの課題を解決するために、クラウドの活用は非常に有効です。例えば、データをクラウドに移行したり、バックアップデータをクラウドに保管したりすることで、自然災害などの影響を受けてもデータの完全消失リスクを低減できます。また、オフィス外でも業務を継続できる、日常の運用負荷・コストを低減できるといった側面もあります。以下に、情報資産のBCPにクラウドを活用するメリットを解説します。
データの完全消失のリスクが低減する
クラウドベンダーの多くは、物理的に離れた複数のデータセンターへのバックアップを標準で提供しています。クラウドベンダーのデータセンター内にデータを保存することで、被災やシステム障害、サイバー攻撃などによるデータの完全消失リスクを低減できます。
さらに、クラウドベンダーのデータセンターは地震や火災、停電などに備え、建物の構造や災害対策に厳しい基準を設けていることが多いため、自社で保管するよりも安全にデータを保護できます。
オフィス外で業務ができる
災害でオフィスが使えない状態でも、リモート環境での業務が可能な場合は、クラウドに保管されたデータを活用して事業を継続できます。被災などで従業員の安全確保が難しく、すぐには事業を再開できない場合でも、ネットワークが復旧し安全が確保された後は、クラウドから速やかにデータを復旧することで、事業の再開が可能です。
IT管理者の運用負荷を軽減できる
クラウドの活用は、専門知識を持つ人材が不足している企業にとって非常に有効です。クラウドは基本的にクラウドベンダーが運用管理を行うため、オンプレミスに比べて運用負荷を軽減できます。オンプレミスでは物理的なインフラに起因する障害が発生した場合、IT管理者がサーバルームで対処する必要がありますが、クラウドでは物理的なインフラの管理は不要です。
初期費用を抑えられる
クラウドはハードウェアの購入が不要なため、初期費用を抑えることができます。例えば、オンプレミスではバックアップ用のサーバを用意する場合、サーバ本体や周辺機器などの導入費用が発生しますが、クラウドであればこれらの費用は不要です。
BCPにクラウドを活用するデメリット
クラウド活用には多くのメリットがありますが、次のようなデメリットも存在します。
セキュリティ要件によりクラウドに保存できないデータの管理が必要
データの機密性や企業のセキュリティポリシーにより、クラウドでの保管に適さないデータはオンプレミスに保管する必要があります。クラウドとオンプレミスを併用するハイブリッド構成では、両環境の複雑な管理が求められ、コスト計算も難しくなります。さらに、IT担当者の負担も増大します。
機能停止やデータ消失のリスク安定したインターネット環境が必須
クラウドを利用するためには、安定したインターネット接続が不可欠です。インターネット環境が不安定であったり、災害時に通信インフラが被害を受けたりすると、クラウドへのアクセスが制限され、業務の継続が難しくなります。
セキュリティ対策はベンダーに依存する
クラウド利用時には、物理的なインフラへのセキュリティ対策はクラウドベンダーに依存します。多くのクラウドベンダーは、高水準のセキュリティ対策を実施していますが、自社のセキュリティポリシーや特定のセキュリティ要件を完全に満たすかどうかを確認する必要があります。
また、クラウドサービス自体にシステム障害や情報漏えいといったセキュリティインシデントが発生するリスクも考慮すべきです。クラウドサービスを選定する際には、情報セキュリティ管理に関する国際規格「ISO27001」などをベンダーが取得しているかを確認することも重要です。
BCPにクラウドを活用する際の注意点
BCPにクラウドを活用することには多くのメリットがありますが、選定・導入時には次の点に注意しましょう。
データの保管方法とセキュリティ対策を確認する
まず、データの保管方法とセキュリティ対策をチェックします。地理的に距離の離れた複数のデータセンターにデータを分散して保管できれば、一箇所のデータセンターが被災などで利用できなくなっても、ほかのデータセンターに保管したデータを使用して業務を継続できます。また、オンプレミスからクラウドへデータを通信する際に、自社の要件を満たすセキュリティ対策が実施されているかも重要です。セキュリティについては以下のポイントをチェックしましょう。
- 地理的に離れた複数のデータセンターにデータを分散して保管できるか
- 自社のセキュリティ要件を満たす対策が施されているか
- データが暗号化されているか
- アクセス制御が適切に行われているか
- セキュリティインシデント対応体制は十分か
クラウドへの段階的な移行を検討する
BCPの一環として、災害時のリスクを最小限に抑えるために、データを全てクラウド環境で管理している企業もあります。しかし、全てのデータを一度に移行すると、業務の停滞やデータ損失のリスクが高まります。
移行は一部のシステムから段階的に行い、トラブルを最小限に抑えましょう。また、業務時間外に実施し、移行中のトラブルに備えて事前にバックアップを取得するなど、関係部門や担当者との事前調整やリスク管理も重要です。
サポート体制を確認する
クラウドの導入やオンプレミスからのデータ移行、バックアップ作業などに関するベンダーのサポート体制も重要なポイントです。技術面に関するサポートがあれば、社内に専門知識を持つエンジニアが不足していても安心して導入を進められます。また、運用開始後にトラブルが発生した際やメンテナンス時にも、適切なサポートにより安全に運用できるでしょう。
従業員の負担を考慮する
昨今、企業においてもクラウドにデータを保存する動きが活発です。しかし、オンプレミスのファイルサーバからオンラインストレージへ移行もしくは併用する場合、使い勝手が変わり従業員が操作に戸惑うケースが多数見受けられます。そのため、マニュアルの用意やトレーニングの実施が必要です。
または、従来のWindowsファイルサーバをそのままクラウド化し、操作や使い勝手を変えずに利用できるサービスを導入することも有効です。
BCPの観点を踏まえたクラウドを活用した事例
BCPの一環で、ファイルサーバをクラウドに移行した事例を紹介します。
導入前の課題
オンプレミス環境で運用されていたファイルサーバには、技術情報や業務ノウハウなどの重要情報が含まれていましたが、遠隔地にバックアップを保存していませんでした。そのため、災害やシステム障害が発生するとデータ消失のリスクが高く、事業継続性を確保できていませんでした。また、複数の拠点で個別にファイルサーバを管理しており、運用コストの増加と効率の低下を招いていました。
クラウドへ移行
全てのファイルサーバをクラウド環境へ移行し、データの一元管理を実現しました。同時に、データを遠隔地にリアルタイムでバックアップできるサービス環境を構築し、災害時のリスク軽減を図りました。
導入の効果
1.運用負荷の軽減
クラウド環境への移行により、IT管理者のインフラ管理の負担が軽減され、システム運用が効率化されました。その結果、リソースをより重要な業務に集中できるようになりました。
2.データの可用性向上
遠隔地バックアップにより、データの可用性が向上しました。また、災害等でデータセンターが使用できなくなっても、インターネット接続が可能であればバックアップ先のデータセンターからデータを復旧できる体制を実現しています。
ファイルサーバをクラウド上に移行するならi-TECファイルサーバがおすすめ
BCPの一環としてクラウドを活用するメリットを述べてきましたが、情報資産保管環境の最たるものはファイルサーバです。ファイルサーバの移行先としておすすめなのがi-TECファイルサーバです。
i-TECファイルサーバは、Windowsファイルサーバをアイテック阪急阪神独自のフルマネージドクラウド上に構築するサービスで、以下のメリットがあります。
遠隔地バックアップが可能
大阪データセンターから東京データセンターへのバックアップが標準で提供されており、災害発生時にデータが消失するリスクを低減できます。また、1日1回自動でバックアップが保存されるため、復旧が必要な際には、最新の状態との差分が少ないデータを利用できます。
サーバの運用管理を任せられる
サーバの運用管理や障害対応は、クラウドベンダー(アイテック阪急阪神)に任せられます。専門知識を持つ人材が不足している企業に最適です。
使い勝手が変わらない
i-TECファイルサーバは、Windowsファイルサーバをオンプレミスからそのままクラウドに移行できます。使い勝手は、使い慣れたWindowsファイルサーバのまま変わりません。従業員に受け入れられやすく、移行に伴うトレーニングや運用ルールの改定が不要なため、管理者の負担も軽減できます。
まとめ
オンプレミスのファイルサーバには、災害対策やBCPの観点でさまざまな課題があります。特に、企業にとって情報資産が消失した際の影響は大きく、甚大な被害を及ぼします。これらの課題を解決するには、クラウドの活用が効果的です。
ただし、クラウド活用にはメリットだけではなくデメリットも存在します。移行に伴う管理負担やユーザーの使い勝手が変わることを懸念し、クラウド移行に踏み切れない企業も多いでしょう。
i-TECファイルサーバは、アイテック阪急阪神独自のクラウド上に、使い慣れたWindowsのファイルサーバをそのまま構築・提供するサービスです。使い勝手を大きく変えずに、オンプレミスからのシームレスな移行を実現します。
また、1日1回の自動遠隔地バックアップが標準で提供されるため、手間をかけずにBCPを強化できます。ハードウェア管理・サーバ監視および24時間障害対応も標準サービスとして提供され、障害発生時の対応もスムーズです。
オンプレミスサーバの運用に課題を感じている方は、i-TECファイルサーバの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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