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コラム

2024-02-09

フルマネージドサービスとは?マネージドサービスとの違い、メリットとデメリットについて

マネージドサービスとは? マネージドサービスとフルマネージドサービスの違いマネージドサービスとは? マネージドサービスとフルマネージドサービスの違い

近年、クラウドの普及に伴い、「マネージドサービス」「フルマネージドサービス」という言葉をよく目にするようになりました。マネージドは「管理される」という意味で、いずれも顧客に代わってサーバの運用や保守を行うアウトソーシングサービスです。一見、同じサービスと思われがちですが、「マネージド」と「フルマネージド」とでは提供されるサービス内容の思想が異なります。

本記事では、マネージドサービスとフルマネージドサービスの違いや、それぞれのメリットとデメリットについて説明します。

マネージドサービスとは

サーバ管理には、回線・ハードウェア・ネットワーク機器(ファイアウォール、ロードバランサー、スイッチなど)などの管理やサーバOS・ミドルウェア・アプリケーションの設定見直し、各種監視、セキュリティ対応、障害対応、各種運用業務など、幅広い管理業務があります。さらに従量課金制のクラウド環境では、リソースの使用状況を適切に監視し、見直す必要があります。こういった業務は、情報システム部門での大きな負担となることでしょう。

1990年代後半から2000年代に「選択と集中」[*1]という経営手法が注目されたことで、情報システム部門の業務の見直しが進み、サーバ管理業務の外部委託が一般的になりました。その外部委託サービスが「マネージドサービス」です。マネージドサービスは、ITインフラの運用や保守といった業務をサービスとして提供するものです。当該サービスの利用は、業務をアウトソーシングすることとなります。

マネージドサービスのメリット

一部のサーバ管理業務を任せるマネージドサービスを活用することで、コスト、人的リソース、技術力においてメリットを得られます。

メリット1 コストの平準化

マネージドサービスはコストを一定に抑えることができます。社内で全て管理する場合、障害や故障が発生すると突発的に労務コストが膨れ上がる可能性があります。一方、マネージドサービスを外部委託し、障害復旧が基本のサービス内容に含まれている場合、必要なコストは一定の金額となり、予算を組みやすくなります。

メリット2 エンジニアが生産的業務に集中

ITインフラの運用・保守にかけていた情報システム部門のリソースを、アプリケーション開発などのより生産的な業務に割り当てることができます。24時間365日体制の監視が可能なマネージドサービスを利用すれば、夜間・休日の緊急出動のコスト削減も期待できるでしょう。

メリット3 技術力をカバー

障害の切り分けや復旧作業には専門的な技術と経験が求められ、その人材を社内で育成することは容易ではありません。また、育成には時間もかかります。障害の予兆を検知し、障害自体を削減するためには、これらの専門的な技術と経験が必要です。マネージドサービスを活用すれば、自社では賄いきれない専門的な技術と経験を外部に頼ることができます。

マネージドサービスのデメリット

後述のフルマネージドサービスに比べて委託範囲が狭く、一部は自社で対応が必要であり、運用が煩雑化する可能性があります。また、このような場合には本来業務の生産性低下にもつながりかねません。

デメリット1 限定的なサービスの範囲

サービス提供者によってサービス範囲が異なるため、希望するサービスを委託できない場合もあります。また、多くのマネージドサービスにはリソースの最適化などのコンサルティングまでは含まれていません。運用リソースを削減できるとは言っても、自社で対応しなければならない部分が残ることは注意が必要です。

デメリット2 システム運用の煩雑化

近年、マルチクラウドやハイブリッドクラウドなど、クラウドの利用形態が多様化しています。特定の領域に限定してマネージドサービスを利用している場合、運用が煩雑になり、期待していたほど社内の負荷を軽減できない可能性もあります。

デメリット3 パフォーマンスの低下

多くのマネージドサービスには、根本的な改善提案まで含まれるコンサルティングサービスが提供されていません。例えば、リソースが不足してシステムのパフォーマンスが低下している場合でも、障害が発生するまで積極的な対策を講じず、改善提案は別途オプション料金が発生するケースが少なくありません。任せきりにしていると、問題の早期発見や障害を未然に防ぐための対応が行われず、結果としてシステムの性能低下を引き起こすリスクがあります。

フルマネージドサービスとは

フルマネージドサービスは、マネージドサービスで提供されているサービスに加えて、より広範囲のサーバ管理業務を代行します。一般的なマネージドサービスではオプションとして別途料金が発生することが多いセキュリティ対策や24時間365日の障害監視・復旧サービス、コンサルティングなどが、フルマネージドサービスには最初からサービス内容に含まれています。つまり、サーバ管理に関する業務はほぼ全て任せることができます。アイテック阪急阪神のフルマネージドクラウドも、クラウド構築や移行から運用、監視までを一貫してお引き受けする統合型サービスです。

サービス内容範囲の一例

サービス内容範囲の一例

フルマネージドサービスのメリット

サーバの可用性を高めるためには、迅速な各種サーバの設定変更や、夜間・休日の障害対応に対応できる24時間365日の監視体制とサーバ・ネットワークのITインフラエンジニアが必要です。また、技術力の蓄積も必要です。フルマネージドサービスは、これらの課題を全て解決します。

メリット1 全てアウトソーシング

サーバ管理に関する業務を全てアウトソーシングできるため、自社でサーバ管理専任のエンジニアを用意する必要がなく、アプリケーション開発や管理、Webサイト運営に専念することができます。

メリット2 サーバ管理の技術・スキルの蓄積不要

自社で対応しなければならないサーバ管理業務がほぼないため、社内に知識や技術を蓄積する必要がなく、専任の担当者を雇う必要もありません。組織変更などによる異動や離職のリスクを軽減することができます。

メリット3 サービスレベルの向上

自社で24時間365日の障害の監視と復旧に対応できる体制を整えることは、多大な負担になることでしょう。フルマネージドサービスを利用すれば、障害の原因を究明・復旧するだけでなく、根本的な是正処置や最適化の提案を受けられます。包括的で、きめ細やかなサービスが提供されるため、効率的なクラウド活用と高可用性を実現し、サービスレベルを向上できます。

フルマネージドサービスのデメリット

フルマネージドサービスは、全てを任せられるがゆえのデメリットもあります。主には、コスト、権限、責任範囲の3つの観点です。

デメリット1 広範囲ゆえの高コスト

マネージドサービスに比べてアウトソーシングする範囲が広いため、それだけコストは割高です。単純なサービス料金のみではなく、社内で管理担当者をアサインした場合の人件費も含めて比較して判断するとよいでしょう。

デメリット2 大きな権限を委託先に付与するリスク

近年では、委託先からの情報漏えいによって、大きな被害を受けるケースが増えています。 フルマネージドサービスはシステムの管理者権限を付与することになりますので、注意が必要です。また、基本的にメンテナンスなどもフルマネージドサービス提供者の判断で計画・実施されるため、業務アプリケーションへの影響がある場合は、事前に事業者との綿密な取り決めが必要です。

デメリット3 曖昧になりやすい責任の所在

フルマネージドサービスは、責任の所在が曖昧になりやすいこともデメリットです。多くのクラウドサービスはプロバイダーと顧客の間で、責任分担が明確に定められています。しかし、フルマネージドサービスはサービス内容が事業者によって異なる上に、システムの管理者に近い大きな権限を付与するため、顧客が責任を負う範囲や条件が曖昧になりがちです。契約条件の調整、適切な情報セキュリティポリシーの設定は必須です。特に、機密情報の取り扱いには注意を払いましょう。

なぜフルマネージドサービスとマネージドサービスが注目されるのか

フルマネージドサービスやマネージドサービスが注目されている背景には、クラウド移行の加速やITシステムの複雑化、慢性的なIT人材不足、情報セキュリティ意識の高まりなどがあります。

システムのクラウド移行の加速

クラウドは迅速で柔軟なリソース管理が可能であり、ビジネスニーズに素早く対応できます。さらに物理的なハードウェアの調達や管理、運用にかかるメンテナンスコストを削減できることから、クラウド移行が加速しています。一方で、この加速により、従来のような経験や知識・ノウハウの蓄積が追い付いていない状況が散見されるようになってきています。

システムの複雑化

DXの推進やIoT、AIといったテクノロジーの進化により、企業のシステムはますます複雑化しています。クラウドについては、単一の基盤を利用するのではなく、マルチクラウド、ハイブリッドクラウドなど複数のクラウド基盤やオンプレミスとの併用で運用するケースも見られます。さらにIoTのようにあらゆるデバイスがインターネットにつながり、管理対象の機器が急増していることも、さらなる複雑化を招いている要因と言えるでしょう。

IT人材不足

深刻な課題の一つがIT人材不足です。システムのクラウド移行、ITシステムの複雑化によりIT人材への需要が高まる一方で、人口減少社会における労働人口不足が顕在化しています。経済産業省の調査によると、2030年までの中位シナリオ[*2]では、国内で約45万人のIT人材が不足すると予想されています。2023年現在もすでにIT人材が不足している状況で、実際に専任のエンジニアや情報システム部門を社内におかず、完全に外部委託している事例もあります。

IT人材の「不足数」(需要)に関する試算結果

IT人材の「不足数」(需要)に関する試算結果

出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査『<参考1>IT 人材需給の試算結果』」を加工して作成

セキュリティ意識の高まり

近年、情報漏えいやサイバー攻撃などのセキュリティインシデントが増加傾向にあり、企業のセキュリティリスクへの危機管理の意識が高まっています。情報通信研究機構の「NICTER 観測レポート 2022」では、2022年のサイバー攻撃関連の通信数は7年前と比較して約8倍に増加したと報告されています。こういったリスクに備え、セキュリティパッチの適用やアクセス制御、改ざん検知などの多様なセキュリティ対策を講じる必要があり、サーバ管理者にはセキュリティ対策の業務負荷も高い状況です。

サイバー攻撃関連の通信数の推移

サイバー攻撃関連の通信数の推移

出典:情報通信研究機構「NICTER 観測レポート 2022『表1: 年間総観測パケット数の統計(過去 10 年間)』」を加工して作成

フルマネージドサービスとマネージドサービスのどちらを選定するか

これまで解説してきたように、マネージドサービスはサーバ管理業務の一部を外部委託するサービスです。そのため、一定の知見を持った社員が社内にいて、手の足りない部分だけ外部の力を借り、基本は自社が主体的に対応することが可能な場合に適しています。

一方で、ほぼ全てのサーバ管理業務を委託できるフルマネージドサービスは、社内に専門知識を持つ社員がいない場合や、人的リソース不足の場合、24時間365日の監視体制を社内で実現するのは難しい場合などに有効です。大きな権限を外部委託する点に不安を感じる方もいるかもしれませんが、信頼できるパートナーを見つけ、サーバ管理業務の負荷を下げ、別の業務に人的リソースを集中させることができれば、ビジネスの発展に寄与するでしょう。

コストの面ではマネージドサービスの方が抑えられることが一般的です。その分、マネージドサービスの範囲外に時間を取られたり、適切に対処できなかったりした場合、業務停止につながるなどのリスクもあります。人的リソースの確保・維持も含めたコストパフォーマンスで比較する必要があります。

フルマネージドサービスもマネージドサービスも、クラウド移行、複雑化するITシステム、IT人材不足、セキュリティの強化などクラウド活用における課題解決をサポートしてくれる心強いサービスですが、技術の変化が激しくIT人材の確保が難しい現状を鑑みると、これからはフルマネージドサービスの需要がさらに高まっていくと予想されます。

サービス内容 フルマネージドサービス マネージドサービス
サーバ構築・設定
OS初期設定
ネットワーク設定
回線
サーバ死活監視
サービス/ポート監視
セキュリティ診断&アップデート対応
障害一次対応(再起動など)
障害二次対応(専任エンジニア対応)
設定変更
改善提案 ×
サーバ管理者責任 ×

【表】サービス内容範囲比較(※一例)

出典:アイテック阪急阪神 トータルクラウドソリューション「フルマネージドクラウド

フルマネージドサービスの選定ポイント

繰り返しになりますが、フルマネージドサービスは大きな権限をサービス提供者に委ねることになります。自社のビジネスに最適なサービス内容で、信頼できる企業のフルマネージドサービスを選定するためのポイントを紹介します。

フルマネージドサービスの提供範囲

フルマネージドサービスは全てのサーバ管理業務を委託できるとは言っても、提供されるサービスの範囲はサービス事業者によって異なります。各社の標準サービスやオプションのサービスの範囲は確認しておきましょう。

クラウドを効果的に活用するための柔軟性

部分最適ではなく、自社の課題全体を踏まえて解決策を提示する姿勢であるかは、商談時に見極めておきたい重要なポイントです。また、障害の通知方法は自社の利用しているコミュニケーションツールに対応可能かなど、自社のニーズに合わせたカスタマイズが可能で、柔軟に対応してくれる委託先を選定しましょう。

企業としての信頼性

フルマネージドサービスは大きな権限を委託先に渡すため、セキュリティ対策や管理体制が充実している事業者が推奨されます。委託先のセキュリティポリシーやガイドラインが適切か、加えてデータ保護法をはじめとする法令に準拠しているかを確認しましょう。ISO27001やプライバシーマークなどの認証取得状況も参考になります。また、窓口の営業担当や技術担当が対応できない時に備えたバックアップ体制がとれているかなど、人的リソース面の確認も必要です。

まとめ

マネージドサービスやフルマネージドサービスは、DX化が進む現代のビジネス環境において必要不可欠なサービスです。特にフルマネージドサービスは、広範囲のサーバ管理業務を委託するため、自社の業務負担を大幅に軽減できます。コストを最適化しながらビジネスに集中できる環境を得るために、フルマネージドサービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

注釈

  • [*1] 「選択と集中」とは、企業が競争力を高めるために、特定の分野や事業に絞り込み、そこでの競争力を最大化する経営手法。

  • [*2] 「中位シナリオ」とは、2018年を100とした場合の市場規模の需要の伸びを約5~2%とした場合のシナリオ。

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